Major Debut Single「休もう!」 OFFICIAL INTERVIEW
2026.08.21

――元気そうだね。
いまみ:元気です。もうバキバキです。目がバキッてます(笑)。
――初ライブを終えて、今はどんなふうに日々を過ごしてるの?
いまみ:ライブが終わったあとは、アドレナリンが出すぎてて。中学のサッカー部で試合終わったあとのアドレナリンの感じ。「雄叫び上げたい!」みたいな感じが、ずっと続いてます。
――今も?
いまみ:今も。めちゃめちゃ続いてます。
――燃え尽きてる感があるかなと思いながら今日来たんだけど、全然そんなことなさそうだね。
いまみ:若干燃え尽きた感もあったけど、それよりも楽しかったほうが強かったから。(ワンマンライブをしたのも)まだ一回だから、さすがにまだいけます。
――あらためて振り返ると、自分のなかで、あのライブはどういうふうに残っているの?
いまみ:高校の時の文化祭と変わらないな、みたいな。地元の友達がひとり観にきてくれて、その子と終わったあとに話してたんですけど、「文化祭の時のおまえだったよね」「やっぱり原型があったから、それが今も通用するんだ」って。そう言われて、嬉しかったです。普通に単純に楽しかったのもあるんですけど、自分が中高でやってた「人前で何かする」ということを、もっとエネルギッシュにやってみたらどうなるんだろうと思ってやってみたら、意外とそれをみんな楽しんでくれたような気がして。「あ、よかった」と思えました。
――中高生時代の原型にとらわれずに新しいいまみれんとしてやるっていう発想もあったと思うんだけど、今回は原型が見えるようなライブをしたかったということ?
いまみ:もともと原型でやろうと思ってたわけじゃなかったけど、自分が本能的にやる動きも、シャウトも高校の時からやりたかったことだったし。地元が田舎なので、そういうことをやっちゃうとマジで変な人だと思われちゃうからもう少し抑えめにしてたけど、(ライブで)やっとそれを解放できるなって。高校の時も、あのライブも、本能のままにやったら結果は同じでした。だから、延長線上にあるものなんだなって。
――やっぱり俺のなかからはこの俺が出てくるのか、っていう。
いまみ:そうそう。「やっぱりこの俺が出てくるよね」という。
――それは自分のなかではすごく肯定的なの?
いまみ:すごく肯定的です。高校の時に「もうちょっとやりたいな」と思ってたことが、あの場では安心してできたから。やれて嬉しかった。
――観ていても、「あ、これでくるのか」みたいな感覚があったんだよね。いちばん原始的ないまみれんでライブをしにきたんだなって思った。そう言われるとどう?
いまみ:お客さんは初めて僕のライブを観るからびっくりしたかもだけど、作り込んでない、原始的でいちばん何も取り繕ってない僕だったというのは、たしかにあるかもしれない。音源通りに歌うのも嫌いではないけど、別にそれだったらライブじゃなくてもいいと思っていて。Queenとかのライブ映像を観てても、フレディ(・マーキュリー)も、その都度、ライブによって変えてるし、その系譜を自分が尊敬していることもあって。メロディを変えてもいいし、“愛の歌”も本当はもうちょいポップだけど、シャウトを入れたりしました。お客さんの反応を見て、そこで明らかにちゃんと音源通りに歌ったほうがいいかもって思ったら変えてたと思うんですけど、「何をしてもOKだろう」という空間に持っていけた感覚もあったから、気にせず歌ってました、自分で気持ちいいように。その場のノリで決めた感じはありました。
――自分のなかのX軸、Y軸のど真ん中というか、本籍というか。「このやり方でOKだったら、これから先何度でもここに立ち戻ってこれる」というものをちゃんと見つけにきたんだな、っていう感じがしたかな。
いまみ:たしかにそうかも。仮に今回のライブでお客さんの反応が微妙だったり、関係者の反応が微妙だったら、それこそ軸を見失ってただろうから。「自分のなかではこれが真ん中でいちばんスタンダードなんです」ということを提示してみた感覚はたしかにあって。そのうえで反応がよかったから、「一旦はこれでOKなんだ」というふうに安心した感じはありました。置きに行ったわけではないけど、「これなら何回でもできます」みたいな。言い方が悪いかもしれないんですけど、もっともっと暴れられるし、もっと抑えめもできるけど、そのちょうど真ん中を提示したら反応がよかった。「ラッキー!」みたいな(笑)。
――理想的な形で理想のものがスタートから手に入ったんじゃない?
いまみ:それはめっちゃあります。あの日のライブは、お客さんに対しても関係者の人に対しても、「俺はこれで行くからね」「一旦のスタンダードはこれだから」という意思表示のためのライブでもあったから。それをある程度の人が認めてくれてたのはすごくラッキーなことで。
――でもそれは開き直りという感じもしなくて。「ちゃんと自分の価値観を提示します」という、とても大切な挨拶に見えた。
いまみ:本当にそうかも。それこそ、関係者を最初のMCでちょっとイジるとかも、ある意味異様な空間だからお客さんがビビらないように説明してあげたいっていう意味もあったけど、もうひとつは関係者の人たちに「私はあなたたちがいることもちゃんと認知したうえで、今からやりますからね」っていう意思表示でもあって。(空間のなかに)関係者がいることを自分が口に出すことで、関係者の人たちもそのうえで「今から何してくれるんだろう?」って思ったと思うし。で、あのライブになった(笑)。
――礼儀正しいライブだと思ったよ。
いまみ:礼儀。そう言われると本当にうれしいです。騙してはないし。
――「面白くていい青年じゃないか!」みたいな感じだった。「気持ちいいやつじゃん!」っていう。
いまみ:うれしい。もし最初のライブで丸くしすぎて、2回目のライブであれをやったら、人によっては「思ってたのと違う」ってなるじゃないですか。僕、恋愛でも最初に全部自分の悪いところを言ってから、それで「よければ好きになってください」って伝えるタイプで。だから、関係者の人たちに対しても「これを観て今後僕を呼ぶか呼ばないかを決めてくださいね」っていう気持ちがありました。
――取り繕うこともなく、斜に構えるわけでもなく、自分自身を過不足なくちゃんと出すという。そういうデビューライブは、なかなかないと思う。
いまみ:たしかに、そんなに意識もしてなかった。お菓子も関係者を目がけてぶん投げたし。
――あれ、何を投げてたの(笑)?
いまみ:お菓子です、グミとか。できるだけ速く投げて(笑)。
――ああいう一つひとつのアイデアも、れんくんが出したの?
いまみ:お菓子にしようっていうのは僕が言って。ライブをしてたら、絶対に何かを投げちゃうだろうというのはもともとわかっていたので。ライブ中にマイク投げるとか、マイクスタンド投げちゃうみたいな衝動性があるから、それをちょっとでも抑えるために、「じゃあお菓子にしましょう」って。あのスピードでマイク投げたらまあまあなことになるから(笑)。お菓子だったらギリギリ……ちょっと痛いぐらいかな、って。
――いいライブだったね。「こいつ、おもろ」っていう。関係者もみんな、ニヤニヤしてたじゃん?
いまみ:ニヤニヤしてた(笑)。終演後の挨拶もみんな声デッカいし。みんな、なんかだいぶ上がってた感じはあった。
――ライブを観てあらためて思ったけど、れんくんは本当にチャーミング。身を削って、ゲロを吐くように作る曲はもちろん大事だし、これからも喉に指突っ込んでゲロを吐きながら曲を作らなきゃいけないかもしれないけど、君が音楽というもののなかに面白いものを込めようと思って作ったものは、ちゃんといい音楽になる。そういう才能を持っているし、それがちゃんとみんなに愛される曲になる。そういう魅力を持っているのだから、安心して曲をどんどん作ったらいい――という話を前回したけど、この人はちゃんと愛され続けるんだろうなと、ライブを観てあらためて思えたな。
いまみ:嬉しいです、それは本当に。照れちゃいますね。
――アリーナでやってるイメージができたよ、ちゃんと。
いまみ:嬉しい。もっと人(観客)がたくさんいたほうが、やれることは増える気がする。今回のライブを観て、関係者の人たちに「狭そう」って思ってもらえればいいなと思ったんですよ。少なからず、「パフォーマンスとしてもうここは狭いよ」っていう意思を関係者には伝えたつもりだから。その意思表示はしたから、「売れさせてくれるといいな」っていう。
――売れてほしいなあ。
いまみ:他力です(笑)。でも、もっと大きいとこでやりたいなって思う。
――このスケール感は、楽曲のクオリティの手前にある身体的なインパクトが大きくて、端的に言えば、やっぱり声のデカさだよね。いい/悪い、上手い/下手じゃなくて、とにかく声の性質からしてデカいということが大事で。
いまみ:僕、あんまり自分ではわかってないんで。
――れんくんの声は、デカく聴こえるタイプの声だなとあらためて思った。歌っていてどうだった?
いまみ:リハの時から出しすぎて。「もうちょい抑えて歌っていいんだよ」「マイクを知ってますか?」みたいな感じで(笑)。それで抑えて歌ったら意外といけるし、僕の7、8割が普通の人の大きい声ぐらいだったから、ゲネでも抑えたらギリギリ歌えそうだなと思ったんですよ。でも、本番は普通にお客さんと目合った瞬間テンション上がっちゃって。もう一曲目から、最後まで歌えるかどうかは考えずに出せるだけ出して……1割は、頭のどこかで冷静に喉の使い方を考えたり、抑えるところは抑えたけど、9割は本能的に、その場で出したい音量で出してた感じはあったかな。
――自分の歌への信頼というのかな、「俺の歌は頼れる」「いざとなったらなんとかなる」という自信、実感を、今回のライブで感じることはできなかった?
いまみ:頑張ろうと思えばいくらでも出せるから。高校の時のライブ映像を観返してたら、がなった歌い方、MCの時の大きい声は、高校の時に比べたら味が付いてきてる感じがあって。高校の時に「できないな」「やれないな」「いつかやりたいな」って思っていたことができたから、そこはちょっと安心した。退化してるわけじゃなさそうと思って、安心しました。
――れんくんは、地声で歌うこともあるし、ファルセットで叫ぶ時もあるし、しゃくりながら叫ぶ時もあるし、いろんな声を出すじゃない? その一つひとつに毎回正解があるわけじゃない。でも、今日のこの場のお客さんの感じ、今日の自分のテンション、自分の喉の具合、自分の精神状態を全部重ね合わせると、「今、この瞬間に出すべき声」というものがやっぱりあって、それをちゃんと見つけながら歌えるかどうか。それは大事だと思うんだよね。ライブを観ていても、そういう細かい感性をちゃんと持ってる感じがしたんだよね。
いまみ:たしかに、ライブ中は考えてやってました。4曲目までやったあと5曲目にすぐ入る予定だったんですけど、MCを入れて、「飛ばしすぎちゃった」って喋りながらちょっと喉を抑えて、一呼吸置いてから歌うようにしたりとか。地声で大きい声を出すだけの曲だったら別にそんな喉使わないし、“求める nor i”も、お客さんが歌ってくれるだろうから抑えたりして。ちょっと打算的な部分も考えはしながら、「ダメだったらこうしよう」みたいことをライブ中考えて、歌い方をいろいろ変えてました。
――そうだよね。闇雲に「叫んじまえ!」じゃなくて、ちゃんとひとつずつ出すべき声を見つけていく。今日の正解を見つけていける人なんだなと思ったよ。
いまみ:ちゃんとやってましたね。じゃないと、すぐに声が出なくなっちゃうから。
――見え方も、よくわかってるんだと思う。
いまみ:はい。見え方はめっちゃ気にしてます。
――それは打算的っていうんじゃなくて、ひとつの才能で、価値観だと思う。何をどういうふうに見せたらみんなが喜んでくれるのかを考えるのは、ある意味当たり前のことじゃない? その当たり前をちゃんと考えられている。
いまみ:一応プロとしてギリギリのラインがあるし、ここまでの声の出てなさは許してくれるだろうっていう「みんなが許してくれるライン」は、自分のなかにあって。フレディも喉の調子が悪い時は本当に声が出てなかったから。だけど、別のところで補ってる。(ライブにおいて)ボーカルは僕しかいないから、そこだけはちゃんと責任を持とうと思ってました。歌だけは絶対に自分に責任があるから、そこは気をつけるようにしてました。
――そして、いよいよメジャーデビューという。“休もう!”でメジャーデビューをするというのはどういう経緯だったの?
いまみ:“休もう!”自体は、3年ぐらい前からある曲なんです。新規で曲を作るのか、過去のデモから掘り出すのか、事務所の人とも話して決まったのが“休もう!”で。最初は懐かしいぐらいの感覚で、「たしかにいい曲かも」みたいな感じだったんですけど、制作をするにつれて昔のノートを引っ張り出して読んでたり、いろんな記憶を思い出して、のちのちいろんな感情とか思いが肉付いていって、この曲になりました。
――みんなが「これがいい」って言っているのは、本人からすると意外だったの?
いまみ:「そこなんだ」みたいな。でも、僕も衝動的な曲は好きだし、形にしてみたいかもとは思ってたから、めっちゃピンときてるわけでもないけど、「これなんすね」みたいな感じで最初は作ってました。
――3年前に“休もう!”を作った時、れんくんはどういう状態だったの?
いまみ:当時付き合ってた彼女と別れたところで。その子と喧嘩して、賃貸の壁を壊しちゃったんですよ、僕が怒って椅子を蹴り飛ばしたら。そしたらお母さんも「さすがにお金出せないから、バイトをしてこい」と。それで「わかった」って言って、喫茶店でバイトし始めた時ぐらいで。シフトも週1か2、一日3、4時間働くのがもうギリで。バイトも終わったあとも、電車の駅のトイレで一回うずくまってからじゃないと帰れないとか、人混みが無理すぎるから3、4駅歩いて帰るとか、いちばんギリギリの状態で作ったのが、“休もう!”でした。何曲かギリギリの曲が発表されてるけど、そのうちでもギリギリの一曲が“休もう!”。歌詞も変えてないです、ほとんど。
――当時この曲を書いたことで、自分のなかで何かが成仏する、何かが消化されていくような感覚はあったの?
いまみ:うーん……結果的にはそこから3年間かけて今回のメジャーデビューが決まって消化されたけど、当時はそんな大層な曲だとも思ってないし、マジで暇つぶし。病んじゃって、死にたいって思っちゃうから、包丁のかわりにギター持つみたいな感じで、ただただやって、そしたらなんかできたという曲。一瞬一瞬のツラい時間を消費するためだけに作ってた感じだったかもしれない。
――なるほどね。それが今回メジャーデビューという大きなきっかけの曲になるわけで。ある種の巡り合わせみたいなものは、今どう思う?
いまみ:いちばんツラい時期に作ったのが、今いろんな人の力で曲になって。MVも撮って、音源の最終確認のデータを聴いた時に、めっちゃ泣いちゃって。もう嬉し泣き。久しぶりに嬉しい涙で爆泣きするぐらい、「めっちゃいい曲じゃん!」って思いました。「3年前の自分、よかったね」「生きててよかった」みたいな。メジャーデビューすることに対しての思い入れは、普通のアーティストに比べると少ないかもしれないけど、でも3、4年の引きこもってる時の鬱憤とか鬱屈とした何かはあるから。それがちょっとでも救われた。「あの時期があってよかったんだ」って、やっと肯定できたことをあらためて感じて、それがすごく嬉しかったです。
――本当にいいと思う、この選曲。ライブのあり方とイコールで、礼儀正しいデビュー曲。「僕はこういう人間でございます」っていう。
いまみ:うん。それは思います、「この曲でよかった」って。今まで書いたなかでも自分に近いところにいる曲だし、本当に吐き出すために作った曲だから。そこにコーラスワークを入れて、「インディーズとあんまり変わりません」「これで突き進ませてもらいます」みたいな宣言にはなった気がする。
――盛ってない証明写真みたいな。「ちゃんと盛らずにデビューします」という感じがするんだよね。
いまみ:この曲でよかった、本当に。
――うんうん。ライブで歌った“休もう!”は、自分のなかではどういうものだった?
いまみ:リハの時から一回も“休もう!”をちゃんと歌えなくて。ムズすぎるんですよ。
――観ていても、あ、この曲は簡単には歌えないんだなという印象はあったよ(笑)。
いまみ:あの時はアドレナリンが出てたし、歌い出したけど、「やっぱそうだよね、歌えないよね」って(笑)。でも、あと4曲あったし、この曲の完全版はリリースされてから聴いてもらおうって思って、「もういいや、沸かせるだけ沸かせろ!」みたいな(笑)。ライブでは歌えないってもともとわかってたし、焦りもしなかったんですよ。でも、歌い出した最初の一瞬だけ、ちょっと「いけるかな?」って思った。でも、「いけない」と思った瞬間、マイクスタンドからマイク取って、「来月、リリースされてから聴いてもらおう!」って(笑)。「8月配信です!」って思いながら歌ってました。
――はははは。いいね。
いまみ:やっぱり歌えなかった(笑)。「これ、誰が歌えるの?」ってずっと思ってました。ライブ中はリハの時よりも動き回ってるし、足も上げたりして、体力がどんどん減っていってるなかで、マジで「休みたい」って思いながら寝っ転がってました。歌詞も飛ぶし。「もういいや」って、ちゃんと諦めました。
――うんうん。
いまみ:頭のなかで、ずっとトロッコ問題みたいに考えてましたね。このまま無理やり進んで喉を潰すか、レバーを引いて残りの4曲を助けに行くか、めっちゃ迷ってやめました。大切なメジャーデビュー曲を捨てるっていう(笑)。ひとりの1曲よりも4人の命のほうが大事だと思って、やめた。
――本当にそんな感じだったよね。
いまみ:「メジャーデビュー曲やります!」って始まったけど、歌えないし、思いっきりレバーを引けました。「4人のほうを助けなきゃ」って。トロッコ問題でしたね。
――れんくんにとっての楽曲制作、音楽作品としての完成度と、ライブというまた別のリアルな表現のあいだにある、ある意味で健全な考え方が象徴されていたのが“休もう”だと思う。「今日は歌えないけど、8月になって聴いてくれたらこの曲のよさがちゃんとわかるから!」っていう。そこには魅力的なギャップがすでにあって、いまみれんのひとつの支えになっていると思うよ。そこはどう?
いまみ:そのギャップが許容されるアーティストと許容されないアーティストがいると思うんですよ。ちょっと音源通りに歌えなかっただけで叩かれちゃうアーティストもいるし。自分は歌唱力がすごくあるという売り出し方をしてるつもりはないけど、音源で聴いたらある程度はちゃんと歌えていて、コーラスワークもできている。自分はライブで許容されるアーティストになりたいなって思ってあの場に現れたから、そのギャップをちゃんと受け入れてもらえたのはすごくありがたかった。ある程度みんな許容してくれているとして、その許容ラインをどれだけ広げていけるかがポイントだと思ってます。
――その割り切り方もいいよね。
いまみ:観る人が「ちょっと頑張ったほうがいい」って思うところはなるべく頑張るけど、「しゃあないよな」と思うところは割り切ってもいいかなって。だって、全部はやれないっすよ。無理だと思ったらすぐ割り切ったほうが次の歌と曲に向けて切り替えができるから。そこで変に思考を使う余裕はなかった。
――そういうある種の冷静さ、俯瞰する感じは、昔かられんの中にあったの?
いまみ:そうですね。ライブする2日前ぐらいまではすごく緊張してて、「なんでこんなに緊張してるんだろう?」とかいろいろ考えてる時に、高校の文化祭で歌った時のことを思い出したりしたんですけど。こないだのライブは、みんなお金を払って時間をかけて観にきてくれてるから、最初から僕の歌を聴いてもらえる土台ができてるけど、文化祭は先生、同級生、先輩、後輩、保護者の人たちに、「僕が今から歌います」っていうムーブを見せて、いかにそこにいる人たちに僕が今から何をやっても受け入れてもらえる空気感を作るかが大事だから。まず空気感を作って、そこから僕が何をしても平気になるようにしてたんですよね。その癖は中学からあります。何かしら人前でやる時も田舎だからいろんな見られ方をするんですよ。「この空間だけは自分が正しい」ぐらいまで思わせられる場を作るにはどうしたらいいんだろうって、ずっと考えてて。だから、ある意味、この前のライブは楽勝ではあった。大前提として、僕が歌を歌う人っていうことをわかったうえで、集まってくれているし、説明の空気感を作らなくてよかったから。安心して歌えた気がする。
――ライブ、どんどんやれそう?
いまみ:うん、大きい怪我さえしなければ。終わったあと、もっとみんなと歌いたかったなと思ったし、みんなとまたすぐ会えたらいいなと思った。たぶん、適切な頻度であの暴れ方ができればいいんじゃないかなと。
――最近、曲作りはどう?
いまみ:ライブ終わってから気分がまた高揚し始めたから、パッと作ることが増えました。「もっとライブで暴れたいからこういう曲を作ってみよう」とか、ライブを見据えた曲作りが頭のなかに生まれて、変わってきた感じもあります。
――年を重ねていく、経験が増えていく、目の前にお客さんがいてくれるとなると、当たり前だけど、フラストレーションをパワーにするということがやっぱり難しくなっていく。そこに対するジレンマは、今もある?
いまみ:前よりは焦らなくなったかもしれない。それこそ暴れる用に作った曲が、めっちゃいい感じに仕上がったりして。それは狙って作ったわけだけど、あんまり絞り出すように作らなくても、自分が普通に「作りたいな」「いいな」と思えるものをお客さんも受け入れてくれた感じはしたし。逆に、すでに発表してる曲で、僕自身はお客さんに手拍子も求めなかったけど、手拍子してくれる人もいるし、手を挙げてる人もいるし、手拍子の拍の取り方も違ったりして。お客さんがバラバラの反応をするのを見て、なんか作りやすくなったんですよね。あんまりうまく言葉にできないけど。
――うんうん。
いまみ:既存の曲でもみんなの反応が分かれるし、それぞれでそれぞれの正解を出してるから。想像しやすくなった感じがすごくあります。
――その感覚は、今まで得られたかったものなんだ。
いまみ:そうですね。ライブの映像も、お客さんの反応をずっとアップにして観たりしてるんですけど、曲によってみんなバラバラな反応するから、それを見てると作りやすい。自分が想定してたことと違う動きをしてくれる人がいても、それは間違ってないし。自分が思っていたよりもお客さんがいい反応してくれることがわかったから、自信持とうと思いました。
――前に話を聞いた時は、フラストレーション、あるいは恋人と別れた時の気持ち、そういう強い反動をもとに曲を書くことが多かったから、これからその部分はどうなっていくのかという岐路の前にいる感じだったけど、変わったんだね。
いまみ:そうですね。言い方はあんまりよくないけど、前よりも「チョロ!」って思うようになったかもしれない(笑))
――いいじゃん(笑)。
いまみ:バンドのメンバーだけで(ライブ用に)3曲ぐらいアレンジしたけど、みんながいることで思い通りのものがパッてできるから、「楽勝すぎる!」と思って。前みたいに考えて作るよりも、「どうにかかっこよくなるでしょ」みたいな安心感が出てきた感じはある。
――それはれんくにとってやりやすい?
いまみ:めちゃめちゃやりやすいです。バンドっていいなと思いました。みんなでスタジオ入って、あのスピードでパッてできたら、いくらでも作れちゃう。リハでみんなでひとつの曲をアレンジしている時にドラムとギターを聴いてると、別のメロディと歌詞が思い浮かんでくるから、「違う曲も作りたいな」と思って。そういうのもいいなって思う。ひとりじゃなくても、みんなでやるのもありだなっていう感覚があります。
――そこで出てくる曲はきっと、自分の経験を削り取るように、ゲロを吐くように書く曲というよりも、音楽的な才能によって生まれてきてしまう曲であって。そういう曲でも「これはちゃんと自分の曲だ」って思えるようになってきた?
いまみ:そうですね。メロディは、どうやっても結局自分っぽさが出るから、歌詞はあとから考えればいいかって感じです。リハ中もいろいろメロディが思い浮かんだけど、「一旦リハやるか」と思って。今回のライブで「いまみれんはああいう曲調の人なんだ」って思われたくないくらい、僕は思いつきで曲を書くから。でも、思いつきのなかで自分の気持ちって思えるメロディ、快感を感じられるメロディを落とし込みにいきたい。その根本がわかった気がする、「いつも俺って思いつきで作ってたよね」みたいな。
――うんうん、いいですね。アドレナリン出っ放しっていう話だけども、精神状態はどう?
いまみ:前よりは落ち着いてきたんじゃないかな。ワンマン本番までは緊張でそわそわもしちゃってたけど、「やりたくない!」というふうにはならなかったし。意外といい気がします、最近は。
――なんか穏やかな雰囲気をまとっている感じがする。でも、またちゃんとぐちゃぐちゃになるんだろうな。
いまみ:なると思います。新たな壁が出てくると思います(笑)。
――ちゃんと違うレベルでくると思うよ(笑)。
いまみ:ヤだな、本当に。でも、どうにか頑張ります。
――バンドメンバーが鳴らした音に対して反射神経としてアイデアが降ってきて、それを曲にするという書き方もできるようになって、それも楽しくていいものだと思えているという。それは音楽家として、自分の持っている能力に正しく向き合えているということだと思うよ。
いまみ:うん、たしかに。メジャーデビューを発表した日の次の日ぐらいから「プロとしてやっていくんだ」っていう意識がちょっとだけ出てきて、今は自分なりに音楽に向き合ってみようと思って、いろいろ模索してる最中ではあります。
――楽しみだね。
いまみ:本当ですか?
――楽しみだよ、とても。
いまみ:嬉しい。
――自立したアーティストになってほしいな。「自立」というのは、自分で朝起きて、遅刻はしないで、とかそういう話じゃなくて、ジャンルの追い風を受けるだけじゃなく、いまみれんとして評価されてほしいと思う。
いまみ:「こういうジャンルでやって!」って言われなければ、僕は勝手にいろんなところに突き進んで行くから。あとは、大人の人たちが頑張ってくれる(笑)。この前のライブで、変に制限しないほうがいいですよ、ということは伝えたつもりだから。「口を出したらどうなると思いますか?」っていう(笑)。口を出されると、僕、何も動けなくなっちゃうから。その意思表示も関係者の人たちにはしたつもりです。コンプライアンスは全部守るけど、それ以外は好き勝手やらせてもらえたらなとは思ってます。
――でも、その下にはちゃんと裏打ちされている部分として、自分で責任を持って考えていることがあるよね。
いまみ:そうです。ちゃんと全部考えてる。だから、もうちょい自分に自信を持ってあげないと。こうやって「ちゃんと考えてるよね」って言われるのも嬉しいです。そうなんですよ、考えたうえで、ああいうパフォーマンスができたっていうのも嬉しい。自分がすべて正しいと思うのは傲慢だけど、自分の考え方は合ってると思ってやっていけば、イメージと本当の部分をもうちょっとうまく重ねていける感じはある。
――まずは、現実の自分と理想の自分を乖離をさせない生き方を、れんくんは当面していくんじゃないのかな。
いまみ:めっちゃ思います。そこは意識してやっていかないとだな、って。どうにか頑張ろうと思ってます。
